「叶、おめでとう!」
開店祝いと書かれたリボンのついた花の鉢植えを持った明が、お店のドアを開けて入ってきた。
「ありがとう!」
鉢植えを受け取り、カウンターの上に置く。
「忙しい? 何か手伝おうか?」
カウンターの外から明が声をかけてくる。
「大丈夫だよ。今日はプレオープンだからそんなに慌ただしくないし。メニューどうぞ。好きなの頼んで。明は特別枠だからごちそうするね」
「お祝いしに来たんだからちゃんと払うよ」
「今日はいいよ。まさか本当にお店開けるなんて思ってなかったけど、明が色々手伝ってくれたおかげでここまでこられたんだから」
「叶が頑張ったからだよ。私は応援しただけ。でも、今日はお言葉に甘えようかな」
「うん、そうして」
食事を通して心身共に健康になれた自分の体験を元に、不調で悩む人の為にできることをしたい、そう思い立ってから、食と健康のアドバイスができる資格を取り、素材の味を生かす飲食店を開けたらいいなと思うようになった。明に話すと、熱心に背中を押してくれ、励まされながら数年かけてようやくこぢんまりとしたカフェのような雰囲気の飲食店『愛のごはん』をオープンすることができた。
カラン、カランとベルの音がしてドアが開き、40代ぐらいの女性が、お店のチラシを片手に入店してくる。カウンターから出て丁寧に頭を下げる。
「いらっしゃいませ」
「あのー、チラシ見て来たんですけど、ここって健康のアドバイスもしてくれるの?」
「当店では不調に悩むお客様の為に、お客様に合わせた食事を提供したり、アドバイスも行っております」
「そうなのね。私、去年病気しちゃって、病気は治ったんだけど、それから消化器官が弱っちゃって、満足に食事できてないのよ」
「それでしたら、消化に良くて食べ応えもあるお食事をお出しします。食後に詳しくお話を聞かせて頂いてからアドバイスさせて頂きますね」
「それじゃあ、楽しみにしておくわ」
頭を下げて、カウンターの中に戻り、料理の準備を始める。明が手を振って、頑張ってと声をかけてくれる。頷いて、笑顔を向ける。
神様、神様、神様……。
愛してくださり、信じてくださり、ありがとうございます。夢を叶えさせてくださり、感謝しています。お客様の為に、愛のごはんを作って健康のアドバイスができるよう精一杯頑張ります。見守っていてください。
カラン、カラン。
ベルの音が鳴り、頭を下げた後、笑顔を浮かべる。
「いらっしゃいませ!」
おわり